とおくてちかい。

あらかた30オーバーがすっかり板についた33歳OL。婚活悪い見本な活動歴。

線対称の名前のあの人とのはなし(1)

友人がたまたま持っていた写真を見せて、ほら、この人、と指した先にはさっぱりとした顔のメガネ姿の男性が写っていた。酔っているのか顔が少し赤い。でも楽しそうに彼は笑っていた。
彼ね、苗字も下の名前も線対称なんだよ、と彼女が教えてくれて、へぇ、それはすごい、と思ったのを今も覚えている。



「合コンで気になった人にメールしても会話が続かないんだよ。たった数時間話しただけじゃ、全然つなげられない………趣味。そう本の話なら際限なくできるのに。そういう好きな事が同じ人と気楽にメールができたら楽しいのに」
数年前の年末。大学時代の友人たちとの忘年会で、そんな事を話した。今も昔もぐだぐだなのは変わっていない。当時は20代半ば、そろそろ結婚報告が増えてきた頃だった。
その会の後、とおちかと話合いそうな人、心当たりあるよ。と、友人の一人が言った。
高校の部活仲間なんだけど、本をたくさん読むし、自分で文章も書く。とても真面目な人だよ。きっと話が合うんじゃないかな。たぶん彼女はいないはず。ただ、今地方にいるんだよね。それでもいい?
その時点で彼はまだ学生だった。
あと数年は学生だと聞いていたし、遠方に住んでいるから実際に会う事もおそらくないだろう、趣味友達が増えれば嬉しいな……という気持ちでアドレスを彼女に渡した。

「山田君(仮称)にアドレス教えたけど、連絡来た?」
新年。友人と会った時に尋ねられた。
アドレスを渡した直後は気にしていたけど、そういえば結構時間が経っている。
山田くんに会った時メール送ったって言ってたんだけど、おかしいね。と友人が言うので帰宅してメールを見てみると、見知らぬアドレスからのメールが届いていた。迷惑メールフォルダに。


読書という趣味はとても幅が広くて、全部の趣向が一致するという事はまずない。
小説ひとつ取っても、ミステリィ時代もの恋愛ものライトノベル……ジャンルは様々で、好むジャンルと作家が何人か共通していればまぁいいか、という程度。

山田君は初めてのメールで、僕はこんなジャンルを今まで読んできて、こんな作家が好きなんですよ、というのを書いてきた。メールの文章もすっきりしていてなんだか好ましい。
あぁこの作家もあの作家も私の好きな人だ! 本の話がこの人とはきっと楽しくできる、と思った。
半月近く自分の不注意でメールを見落としていた事を冒頭で詫び、山田君に返事を書いた。
彼とのメールは、思っていたよりも長く、この後数年に渡って続く事になる。

天地明察(上) (角川文庫)

天地明察(上) (角川文庫)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

この2つは彼からのオススメで読んだ本。自分からは手に取らなかったろうな、と思う。

山田君の話は長くなってきたので、続きはまた今度。